トコロ レン君

「お呼び出しを申し上げます。
トコロ レン君というお子さんが迷子になっております。
お連れ様は 至急リフト券売り場横までお越しください」

日曜日のスキー場はさすがに混んでいた。
このスキー場は個人経営なので、昔からリフト券売り場にはここの経営者の婦人らしきおばあちゃんがいつもいて、場内アナウンスも、ダミ声でやってて面白い。
 そういえば昔はいろんな場所で迷子がいたなあ。
デパートやイベント会場なんかは、大体迷子センターみたいなのがあって、一日に何度も迷子の店内放送があったような記憶がある。

あの頃は携帯もスマホもない時代だから、子供どころか家族もはぐれたら大探しだった。

揖斐郡のスキー場は、小中学生はリフト券が無料。
だから土日はたいへん混んでいる。
小さな子供だらけだ。さすがに子供だけで来られるスキー場ではないので、親が乗るリフト券代だけでも稼げれば、ただリフトをから回ししてるよりもいいのだろう。
賢いやり方だ。

バッジテスト講習が終わりかけのお昼前、また場内放送が
「お呼び出しをいたします」

また迷子か。
ここは、携帯つながらないところだからなあ。

「トコロ レン君のお父さん、至急リフト券売り場にお越しください」

おばあちゃんのダミ声でまたトコロ レン君の連れを探している。
笑ってしまった。

我が家の前の家の子も以前はすごくヤンチャな子で、幼稚園の頃は地元の祭りのとき犬のリードのような紐を付けて歩いているお母さんを見つけたことがある。
「この子、目を離すと何処へ行くかわからないんです」
と恥ずかしそうに言っていた。
その子とトコロ レン君を重ね合わせていた。

バッジテストの検定試験が行われている、午後2時半頃。
シュテムターンが終わり、パラレルターンの大回りも済んで、あとは小回りターンだけである。
これが一番緊張する。
一級受講の4人のうちの2人目が終わって、もうすぐ自分の番という、緊張感maxの時。
ダミ声おばあちゃんの声で

「お呼び出しを申し上げます。
トコロ レン君のお父さん、またレン君が届けられてますよ。いい加減にしてくださいな。
さっさと迎えに来てくださいな!ガチャ!!」

緊張感がほぐれ、いい滑りができました。

実話です。

by ozaken48 | 2015-01-20 01:00 | 日常な日々  

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